漢字を「開く」「閉じる」というとなんのことかと思われるかも知れませんが、代表的なものでいえば、
~頂(いただ)きます。
~致(いた)します。
~下(くだ)さい。
のような漢字でもひらがなでも間違いではないように思える言葉をどちらで記すべきか、「いただく」と開くべきか、「頂く」と閉じるべきかという問題のことです。
結論からいえば厳密に正解はなく、各媒体、発行元ごとに規約が設けられているのですが、一般的な目安として下記のようなものがあります。
補助動詞は開く
例えば、「お支払いいただきます」というように、動詞「支払う」の補助動詞としての「いただく」は開く。
「お金を頂きます」というように「頂く」そのものが動詞になっている場合は閉じる、といった具合です。
複合動詞はどちらかの動詞を開く
見わたす
走りまわる
生きつづける
このように「見る+渡す」、「走る+回る」「生きる+続ける」等のふたつの動詞を組み合わせた複合動詞の場合、どちらかを開いたほうが読みやすい場合があり、原則として「後ろの動詞を開く」のが一般的です。
当て字等は開く
目出度い
御座居ます
流行り(はやり)
ここまでくると当て字なのか一般動詞なのか、時代に左右される部分も出てくるため感覚によるところも大きいのですが、一般的に当て字は開くのが望ましいとされています。
難解な漢字は開く
改ざん
は虫類
こちらも好みによるところも大きく、また、読者層によってどちらが望ましいかの判断が悩ましいところです。
一般的でない漢字は開く
漢字 | ひらく |
---|---|
予め | あらかじめ |
直ぐ | すぐ |
尚 | なお |
殆ど | ほとんど |
又は | または |
稀に | まれに |
先ず | まず |
偶に | たまに |
暫く | しばらく |
未だ | いまだ |
更に | さらに |
割と | わりと |
是非 | ぜひ |
即ち | すなわち |
僅か | わずか |
全て | すべて |
勿論 | もちろん |
~迄 | ~まで |
~達 | ~たち |
事 | こと |
物 | もの |
気付く | 気づく |
上げます | あげます |
下さい | ください |
何時 | いつ |
何故 | なぜ |
何処 | どこ |
此処 | ここ |
出来る | できる |
宜しく | よろしく |
有難う | ありがとう |
可愛い | かわいい |
美味しい | おいしい |
一つ | ひとつ |
「開く」と「閉じる」まとめ
経験の浅い人ほど「きっちりとした文章」を書こうとした際に漢字を多用しがちで、結果として漢字ばかり並んだ読みにくい文章ができあがってしまうことが多い、といわれているため「迷ったらひらがな」というのもありかも知れませんが、ひらがなばかりの文章もどこか幼稚な印象を与えてしまうため難しいところですよね。
そこでおすすめしたいのが、「読み手のことを考えてさえいれば、開いても閉じても間違えではない」という考え方。
例えば、ライターさんからこちらの意図せぬ文章が納品されてきても「本来なら開くところだが、ユーザー層を考えてあえて難解に見せることで選民意識をもってもらう意図があります!」などと説明されてしまえば、ぐうの音も出ないばかりか「この人はライティングだけでなくマーケティングもいけるのか……!」とむしろ「できる印象」さえ持ってしまいます。
時代や媒体にかかわらず、常に有効な「ユーザー目線」を忘れないようにしたいですね。